ストーリー
5年前。王萌萌の事故のあと、夫婦は独自に45系統バスの中で調査を始めた。
萌萌と同じ年頃の少女を見かけると、痴漢にあったことがないか、脅されたことはないかとしつこく問いかける。乗客にとっても運転手にとっても迷惑行為となり、何度も警察に通報され、警察もバス会社も困惑していた。
「王さん、君の気持ちはよくわかってるよ。私だって子供の父親だ。でもこの事件は結審したんだ。こんなことを続けてどうなるんだ?」
3度目の通報でやってきた警官は王興徳に、二度と彼女にこのような迷惑行為を行わないよう、説得してくれと懇願した。
「もう煩わせないでくれ」
警官が去った後、映紅はつぶやく。
「私が誰を煩わせたというの?なぜ彼らは彼らが見つけられなかった証拠を見つけようとするのを邪魔するの?」
爆風に巻き込まれた張成のもとに江楓は駆け寄った。ひどいやけどを負う師父を見て取り乱す江楓。
「救急車!救急車はどこだ!」
一方鶴云も、映紅と揉みあって負傷していた。けが自体は大した傷ではなかったが、失血が激しく貧血を起こしているので、そのまま入院することになってしまう。処置室を出て入院棟へ移動しようとしているところで江楓に絡まれた。
「どうしてバスに爆弾があると知った?答えろ」
江楓は余雷に制止され、また杜からの電話で押しとどめられる。
病室でベッドに腰掛ける鶴云。
「どうしてこんなことに?あと少しだったのに。私たちは何があっても次のループでは時間の余裕をもっと作らないと。そうしたら誰も傷つかなくてすむ」
「次のループはないかもしれない」
乗客を全員助けることが出来たので、これが最後のループだったかもしれないと言う鶴云。
「でもなにか僕らが解決していないことがあるような気がしてならない。王萌萌の死後に起きたなにかに関係があるような気がしているんだ」
5年前の5月13日、跨江大橋で検索するよう詩情に頼む。
「これを見て」
詩情が見せたものは、跨江大橋での王萌萌の事故に軽快な音楽を付けて面白おかしく編集された、悪意のある動画だった。弾幕には萌萌を侮辱、揶揄するような言葉が並んでいる。
「王萌萌の両親がこれをみたらどう思うかしら。きっと爆破から生き残れたことは彼らの救いにとって何の意味もない。私たちはまだこの事件の本質を解決できていないわ」
二人は暗い面持ちになる。
警察もまた、5年前の事件が鍵になると考え、当時の事件を担当した警官と、加害者であるバスの運転手を署に呼び出して事情をきいていた。
「そう物議をかもすものでも複雑なケースでもなかったんです。ただの予測不可能な事故でした」
警官は少女がバスを乗り過ごし、降ろすように運転手に強要し、危険な場所で運転手がドアを開け、少女も確認せず降り、後続のトラックにひかれた、証拠もすべてそろった単純な事故だったと説明する。
運転手は、彼女が凶暴で、運転している運転手の腕を無理やり引っ張ったりしていたので、誤ってハンドルを切ると危ないからと、仕方なくその場で停止しドアを開けたと主張した。
停止場所も問題があったし、後方を確認せずドアを開けた過失も認めており、反省もしていた。
杜は事件のあとに萌萌の両親が運転手に説明を求めに来たか尋ねた。
「あなた方は私が彼らに顔を突き合わせて話す勇気などあるとでも?たとえ私がひざまずいてあやまっても彼らが許さないことはわかっていました。特にあの母親の方・・・彼女は・・・」
説明するうちに興奮し始める運転手。
「本当にどうしていいかわからなかったんです!ここは跨江大橋の上だ!ここで停められるわけがない!」
「でもあなたはそうしました」
冷たく言い放つ葉に運転手は、命には命で賠償するから今すぐ銃で撃ってくれと自暴自棄になって叫びだす。
「ええ!ええ そうです!だったらどうだっていうんです?」
「あなたに来ていただいたのは、なにがそんなに彼ら両親にとって恨むような出来事となったのか知ることができると思ったからです」
杜がとりなす。
「恨むような出来事?誰がこの出来事を恨まないっていうんです?私だって恨んでいるんだ!」
ERで治療を受ける張成。彼の妻も病院に駆け付けた。
「あの人はどこにいるの?」
説明が出来ず黙り込む江楓。
「この記録によると陶映紅は、王萌萌がバスを降りることを強く望んだのは彼女の安全が脅かされていたからだと信じて譲らなかったようね」
運転手を落ち着かせるため別室に連れ出した後で杜は担当警官に尋ねた。
「彼女はその考えにすがっていました」
もう一度事故の様子を確認する警官たち。
「運転手はドアを開けているのに彼女はすぐには降りなかった。なぜ彼女は後ろを見ているの?彼女は誰を見たのかしら?」
杜は警官に尋ねた。
「乗客が多すぎて彼女が誰を見ているのか結局わかりませんでした」
夫婦が住んでいた焦島からは、陶映紅の焦島第一高校時代の同僚の話が届いていた。 陶映紅の精神状態は事故後不安定になり、怒りっぽくなり、生徒を殴る事件も起きた。
王興徳の弟子たちの話では、彼は落ち込んで突然年を取ったように見えたが事故については一切話さなかったとのことだった。王興徳が陶映紅のいうことはなんでもきいたという話も伝わってきた。
杜は病院から、張成が助からなかったという知らせを受ける。悲しみと怒りに満ちる警官たち。
江楓が鶴云の病室に突然入ってきた。
バスに爆弾があることをなぜ知っていたのか、どうして張成の電話番号を知っていたのかと詰問する。
「張成を以前から知っていたのか?」
話せば長くなると語尾を濁す2人に食って掛かる江楓。
「あの・・・張刑事に なにか あったんですか? 彼は・・・」
「張隊長は 亡くなった。君たちが 知っていることを俺に、一切を正直に 話してもらおう」
余雷が制止しにやってくる。
「答えろ!」
「あの2人の警官がバスの中に乗っていなければ、私たち家族はまた一緒になれたのに」
映紅は取調室でうわごとのようにつぶやいた。
「教えて。あなた方は私をこうして捕まえたけど、どうしてあのときはこんな風に注意深く萌萌の死因を捜査してくれなかったの?私たちは真相を教えてくれと頼んだのに」
すべては映紅が計画し、興徳は従っただけだと供述する。
「夫婦だから共犯だと考えているなら、彼は強要されただけです。私はただ彼に一緒に死んでほしいと思ったんです」
「萌萌の最後の電話はあなたに助けを求めるものだった」
杜は興徳に、彼の子供を守ることが出来なかったことに対する罪悪感を理解できると言った。
「なぜインターネットでは知りもしない人間について奴らは口さがないうわさができるんだ?奴らはひどい侮辱の言葉を投げつける。萌萌はまだ20才だったんだ。誰のことも傷つけたことなかったのに」
興徳は悔しい思いを吐露した。
「もしもあのときにほんの小さな手がかりでもあれば、希望の光が少しでもあればこんなことはしなかった」
警察の対応に対する不満も述べた。
「教えてください私たちは間違ったことをしましたか?」
「どんな理由もあなた方の犯罪を正当化しません。あなたはあの乗客たちにも家族がいることを少しでも考えましたか?彼らにも子供がいて両親がいる。あなたは恨みのはけ口をすべて無実の彼らに向けた。そして彼らの家族も崩壊させようと試みた。あなた方の行為を萌萌がみたいと思いますか?」
杜は諭すように言った。
「お手を煩わせましたすみませんでした」
5年前。王萌萌の最後の2回の通話を王興徳はトラックの中に携帯電話を置いたまま仕事をしていて、受けそこなった。
警察に呼ばれて駆け付けた時には萌萌は既に亡くなっていた。
「私は同意しません。補償は要りません。私が欲しいのは真実です。私はどうして王萌萌が突然バスから降りたのか理由が知りたい」
サインを拒み続ける映紅。
「彼女が降りる前にバスでなにが起きたのか、私たちはそれがわかったら私たちはすぐにサインします」
代わりに調書にサインするように言われ、崩れ落ちるように倒れた興徳。
何度も警察を訪れる映紅。男子トイレの方から男たちが噂している声が聞こえてくる。
「俺も痴漢のことはきいたことがある」
「俺にいわせりゃあの痴漢はサイコ野郎だぜ。やつは少女だけを狙うらしい。とうの昔に牢屋に入れとくべきだよ」
45系統のバスに何度も調査のために乗り込む夫婦を、迷惑な乗客として、運転手も他に乗客がいなければ扉を開けず無視するようになった。
事故のあった橋まで歩いてやってきた二人。
「どうして調書にサインしないんだ。彼らは廊下の全部の映像を確認した。男子トイレには誰も入ってこなかった。君がトイレにいた前と後の10分間を確かめたじゃないか。俺たちも45系統バスを長い間調査した。彼らは俺たちをもう乗せようとしない」
トイレでの会話は映紅の空耳だった。彼女は自分の考えに固執して興徳の言葉にも耳を傾けようともしない。
「物事にはどんなことにも理由がある。萌萌はもういない」
萌萌の死でさえも2人に与えられた試練であり、運命だった。乗り越えていかなければいけないと説得する興徳。
「その理由を頼りに、前に一歩一歩 進むしかない」
所感・雑感
本来、映紅は生真面目で神経質な母親だったんだろうなー。それでも娘の萌萌は教育大学に進学したのだから母親のことを尊敬していたんだろう。
おとなしくて自己主張出来ない娘。受動的な優等生。母親が強いとそうなることあるよね。手元にいた時は夫婦が娘のことをひたすら守っていたんだろう。だから、自分で対処できないことが起きた時に、周りに助けを求めたり、反発することが出来なかったんだろう。
興徳が電話を受けられたとしても、結局どうすることも出来なかったんじゃないかなあ。
冷静に運転手に伝えて、助けてもらうことが出来た?きっと二度とバスには乗れなくなっただろう。もしかしたら大学の寮から1歩も出られなくなるのかも。
子供は親の影響をじかに受けてしまう。一生涯守ってあげられるわけないのだから、自立させなければいけないよねー。
とはいえ、インターネット。
私は仕事ではIT職なのですが、会社でもどんなに禁止しても仕事中に掲示板サイト見てる人はいる。セキュリティ上の懸念があるからやめて欲しいんだけど、みんな無頓着。
匿名だから好きなことが言えると思っているし、痛快なコメントを見て留飲を下げたりも出来るんだろう。直接目の前にしては言えないような侮辱的な発言も、幼稚な意見も顔が見えないから平気で垂れ流す。黎明期のネットは集合知だった。でも今は集合痴なんじゃないかと思う時もある。
子を守れなかった罪悪感と、彼女のことなど何も知らない赤の他人からの愛娘への非難。死んだ後にも娘を守れないやるせなさ。
映紅の選択は全く共感できないのですが、彼女の怒りは理解できるかもしれない。何か娘のためにしなくてはいられない。せめて再会だけでも。
でも。萌萌だったら両親のこんな気持ち、なんとか昇華させてあげたくなるよね。タイムループのきっかけは萌萌の願いだったのかしら。年恰好の近い、詩情をとおして。




















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